庭師からの手紙

私たちの庭づくりは、
木、石、土を探すところからはじめます。
求めている「ひとつ」と出会うまで、
山に３日間こもることもあります。
ようやく出会えた「ひとつ」を、
「材料」とは呼びません。
石にも毛布をかけて大切に運び、
そっと庭に据（す）えます。
すべて自然のものだから、人間の思いどおり、
計算どおりにはなりません。
ひとつひとつ、一本一本。
声を聞きながら、手を入れつづけるのです。
３年、５年。
先人たちの知恵を借り、
見えないところまで心を配り、手を添えます。
５年、１０年。
建物、庭、暮らす人、訪れる人が、
ひとつの円になったとき、ようやくひと段落です。
でも、庭に完成はありません。自然、だからです。

片隅に咲く一輪の花で、枝を渡る鳥のさえずりで、
名もない一日が、記憶に残る一日に変わります。
キン、キン、キン、キン。
きょうも庭の片隅で、石にノミを入れています。
私たちは、庭師集団エンズです。

代表庭師　寺西惇